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2002-09

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この頃のブルーグラス・フェスティバル(箱根)/ 2002年9月8日号

HAKONE SUNSET CREEK
BLUEGRASS FESTIVAL

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今年の箱根フェスは、例年より1週間早い
8月23・24・25日(金・土・日)に開かれ
た。私は所用があって、初日から参加できず、
二日目の土曜日の朝に家を出発した。途中、
スーパーで食料を調達したりのんびりだった
ので、フェス会場にはお昼の11時に着いた。
相変わらずの車の多さに倒れてしまうが、し
かし雑然と混んでいるわけではない。フェス
に来た車は、それぞれにマナーを守って、比
較的にきちんと整理されている。
車が多い、という印象は、大部分が『夕日の
滝』を見るためにやって来る一般の車がウロ
ウロするためだ。この傾向は、数年前にテレ
ビの人気番組、NHKの『小さな旅』が、こと
もあろうか夕日の滝をレポートしてしまい、
それ以来、土日は滝見たさに沢山の車が集る
ようになった。
そうすると、フェスに来た車だけ整理してれ
ばよかった音楽好きのボランティアが、一転、
そこいらの駐車場のオヤジに変身しなければ
ならなくなった。

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●名物になった夕日の滝は大人気
「夕日の滝は、夕日に当ると美しくなるんで
すか」なんて、とんでもない質問にも答えな
ければならない。えー、そんなことはありま
せん、いまの時間がいいですよと、あくまで
も丁寧に応対しなければならない。
何故かというと、フェス会場の中に夕日の滝
があって、そこは南足柄市の管理下なのだ。
フェス会場は南足柄市の所有する土地も少な
くないので、滝を見に来た客ともめて、南足
柄市役所とのよい関係にチャチを入れたくな
いからである。
夕日の滝が昔のように、知る人ぞ知る的存在
であれば何の問題もなかった。しかし、思い
もかけないNHKの何物かの企画のおかげで、
市の名物になってしまった。熊に乗った金太
郎の足柄山、金時山と並んで名物なのだ。水
が全く流れ落ちない「なんだコレ」の年もあ
るっていうのにネ。
さっき私が着いたときも、2~3台の車がつま
っていた。しかしボランティアの横川さん、
ニコニコと笑顔を絶やさず巧みにさばいてい
る。これまで問題が起きなかったのは、彼の
優秀さを物語っている。

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●恋のいそぎんちゃく
23日(金)は、午後5:30分にステージが始
まった。プログラムによると午後11:45分、
27バンド目のASH GROVEを最後に終了。そ
のままミッドナイト・ジャムに突入とあった。
ところで、毎年プログラムを見て感じること
に、バンド名の「意味不明どうしてこうなる
の」的つけかたが気になる。
バンドの名前なんて、基本的にはあくまでも
自由勝手でオーケーだと思ってはいるが、自
分の音楽を見て聞いてくれるお客さんに覚え
てもらえるように、もう少し気持ちの入った
ネームが欲しい。
『N』とか『OS』『PM』たちは圧倒的に分か
らない。『お星様バンド』『魚鱗楽団』『如
虎』『武蔵野蜂蜜団』も、何がなんだか、ど
うしたのだろうか。『恋のいそぎんちゃく』
は日活ロマンポルノ映画だろう。『プルーら
ぷ』『世界三大珍味』『MISS わんこそば』
などは、音楽を忘れさせてくれる効果は、確
かにあるようだ。
まだまだ怪しいものがいくつもあるが、以上
はプログラムの中でも目立っていたものだ。

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●4つの地域に別れる箱根フェスワールド
24日(土)は、朝10:00にステージが始ま
った。プログラムをのぞくと、終了は夜中の
午前1:00になっていた。
長い一日の始まりである。
箱根フェスの、全体のロケーションはどいう
構図になっているのか簡単に説明してみよう。
まずフェス会場の入口が、バス停地蔵堂のと
ころで本線と分かれた道路の終点になってい
る。そこには道の上に金太郎茶屋がつつまし
くあって、下の駐車場と10軒くらいの丸太の
バンガロー、トイレなどをまとめて第1エリ
ア。第2エリアは、売店から川までの最高に
にぎわう場所。色々な出店やジャム、パーテ
ィーなど、ちょっとした社交場といってもよ
い。第3エリアは、川を渡りきった川原で、
毎年鮮やかな色のテント村になる。小川のせ
せらぎや渓谷の眺めなどは、自然を満喫出来
るベストポイントだ。右手方向奥に、フェス
の受付があり、一人3000円の入場チケット
を購入する。全てのアナウンス、運営責任も
ここで行っている。ちなみに『夕日の滝』は、
この受付の後方になるが、ゴツゴツの岩場を
10分弱歩かねばならない。
第4のエリアは、パフォーマンスを決めるス
テージと観客席。受付の前の細い道をのろの
ろ20メートルくらい登るというアクセスで、
登りきったら、そこはパッと開けたユートピ
アとなっている。一度体験されたら分かるが、
未体験の人がここの場所までたどり着けば、
まず息がきれて絶句する、そんなエリアだ。

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●驚きのエジプシャン・ファミリー
11:00。土日参加の人々が続々と入場して
いる中、買物や連絡などのため、下界まで降
りる車が混ざり、駐車場かいわいはかなりの
混雑を見せている。私が着いたのもちょうど
この頃だった。タクシーで乗り付ける人もい
る。アメリカのように馬に乗ってる人は、さ
すがにいない。
15:00。私は毎年泊まる第1エリアの丸太
バンガローで、エジプシャン・ファミリーに
対座していた。まったくの外人である。
お昼の『冷やしうどん』を食べたときもお話
しをして、何とかこの珍客に慣れようと努力
をしているが、なかなか慣れない。
エジプシャン、つまりエジプト人のファミリ
ーが、ナゼにこのような箱根フェスという密
教の集合みたいなところに来てしまったのか。
仲間の西貝がチーズの燻製を作りながら「こ
れはね、長谷川が中村橋の町のどっかで声を
かけたらしい。そして箱根フェスのことを話
したら、行くと言って来ちゃった。当然、ブ
ルーグラスはなーんも知らないよ」と言った。
あとで分かったが練馬区中村橋に住む長谷川
が、公園にカミさんと二人で休んでいたら、
エジプシャン・ファミリーに声をかけられ、
そのときは世間話し程度だったが、「初めて
話した日本人」と大変感謝された。ところが、
1週間後に同じ公園で、また会ってしまった。
その時、長谷川は箱根フェスで使おうと折り
畳みイスを持っていた。「それは、なにか?」
と聞かれ、箱根のことを話した。はずみで歓
迎すると社交辞礼的に言ったら、えらい大喜
びとなってしまい、エスコートを約束したの
だそうだ。
あとは同じ町内の、西貝と仲間のバンガロー
に突入となったという。

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●日本に来る前はスーダン。知ってる?
ご主人はモハメッド、奥方はアマル、そして
中学生の長女と小学生の坊やが二人、5人家
族である。イスラム教徒だ。
果たしてブルーグラスに馴染めるのか? こ
んなにアメリカの歌ばっかりうたっている日
本人のなかで、どうなっちゃうの?
という気持ちは、ファミリーを見て常にある。
ところが、ブルーグラスに馴染むという点で
は、小六の長男が岸本一遥のフィドルのファ
ンになったことや、母さんアマルの鳴り物好
きとお祭り好きを見ると、もう充分馴染んで
乗ってけ状態だから、大丈夫だろう。
ご主人モハメッドが、バンガローの畳みに膝
まずき、お祈りを繰り返したあと、私のカミ
さんのいれたコーヒーに、砂糖をスプーン5
杯ぶち込んで、静かに遠くを見つめて砂漠の
哲学者みたいにコーヒーを飲んでいる。
文化の違いを漂わせて、渋い横顔だ。
マルボロライトに火をつけて、隣の私に「い
まのアメリカを、考えたことはありますか?
」と聞いて来た。さすがにエジプト大使館に
勤める外交官である。音楽に戯れて遊んでば
かりいる人ではないのだ。大ピラミッド、ス
フィンクスを建造した偉大な祖先を持つ、選
ばれたエジプト人の質問だった。
中東方面特有の視力3.0、獲物を狙うタカの
ような目つきに見つめられると、日本人ウソ
つけない。「ございません」と、うつむく。

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●さまざまな表情を見せる箱根の社交場
17:00。カメラを持って、フェスの表情を
探しに出かける。出かけようとしたら、うし
ろでモハメッドが、小1の子供にウンチのや
りかたを、言葉で説明している。エジプト語
はまったく分からない。しかし子供のせっぱ
つまった様子を見れば分かる。日本の和式ト
イレは、ジャパニーズスタイルと呼ばれて、
外人には「やりにくい」とかなり評判が悪い。
そこにきてフスのトイレは、お掃除の回数
が少ないため、ヨゴレが目立っていた。一人
でロールペーパーを持って、行ってはみたも
のの、「これは、イカン」と恐れをなして戻
ったのだろう。あーだのこーだのやってるう
ちに、中1のお姉ちゃんがどこからともなく
走って来て、さっさと連れて行った。
第2エリアは、テントも人もいっぱいの盛況
だった。出番を控えたバンドの練習や、ディ
ナーの支度に一生懸命の料理人、ジャムセッ
ションのホットな輪、楽器を間に置いて何や
ら熱心にトークして飽きない人、テーブルを
囲んで美味しそうな物を食べてる『大江戸多
摩バンド』、黒い紀州犬を引いて手を上げた
トンボ夫妻、のんびり裸でくつろぐ外人など、
期待通りの場面があちこちにあって、大満足。
このあと「楽しい美味しいディナー」が待っ
てて、それからメインの夜のステージが控え
ている。何げなく、静かに大きな盛り上がり
に向かって動いてるって感じの空気がたち込
めている。
オンザボーダーのブースでくつろぐ新井秀徳
に出会った。かつて超人気番組の『ドラゴン
ボール』シリーズの効果音を担当したバンジ
ョーマンとして知られてる。また70年代、
東京のニュー・オマンタ・リバイバルのメン
バーでもあった。その時代の、宝塚フェスで
やった凄い演奏を、見て覚えている人もいる
はずだ。「いま、こち亀とワンピースの2本
やってる。バンジョー弾く余裕が欲しい」。
フェスは、このような同窓会的な面もあるか
ら面白い。

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●主催者はみんな仲良く健在なり
『アコースティック・ワールド』の前を通っ
て、幅50センチの橋を渡って、第3エリアに
出た。前日のドシャ降りがウソのように、澄
んできれいな水が流れている。すぐそこの夕
日の滝から流れてきてる小川だから、本当の
源流なのだろう。子供たちが川の流れに入っ
て遊び、母親がそばで見つめる。水面がきら
きらと輝いて、まるで絵ハガキのようだ。
この光景は懐かしい。
かつてこの同じ場所で、私も子供たちに水遊
びをさせた。忘れられない記憶が、鮮やかに
よみがえる。
しかし、我が家は去年から箱根は、カミさん
と二人になった。時間は早すぎる。
受付に着いた。珍しく中西、ウシさん、小森
谷と主催者3人がそろっていた。もう一人、
アコースティック・ワールドの主人、岩本健
がいた。どうやら遊びに来た様子。ウシさん
(中西のカミさん)を除くと、この人たちの
関係はとても深い。すでに30年は付き合って
いるはずで、どうしてこんなに仲がいいのだ
ろうか、妖しいオヤジどもだ。
早々に退散。イデッ、石っコロをひっかけた!

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●ディナータイムはエジプト風味
20:00。我がバンガローの軒下で、待ちに
待ったディナー・タイムが始まった。
メインディッシュは、丸ごとチキンと豚のス
ペアリブを、2台のダッチオーブンで蒸した
もので、大皿に盛られて食べられる瞬間を待
っている。しかしこれがまた旨いのだ。肉が
柔らかく味が沁みて、まさに舌がとろける美
味しさがたまらない。
20年近くこの場所で夕食を食べて来たけど、
去年からのダッチオーブン登場で、メニュー
が劇的に変わった。焼肉、カレーの定番から
抜け出したのだ。
ダッチオーブンが、白い湯気をフーッと吹き
出しながら焼かれているところを見ると、躍
動感というか、ダイナミックさを感じる。本
場アメリカのカウボーイのキャンプみたいに、
本格的な気分になるから不思議である。
近くで誰かが、スタンレーを歌ってる。いい
ぜ、いいぜ。
アマルが、自分で作ったエジプト料理、クシ
ャリを出して皆に味の具合を確かめている。
クシャリは見ためも味も、日本の食堂にある
チキンライスによく似てる。ただ、ライスの
上にマカロニがのせられて、味も日本のより
かなり酸っぱい。「どお、おいしい?」しき
りに食べた結果を聞いている。うなずいたり、
ニコッと口元で表現する日本人の奥ゆかしさ
を、どうやら知らねーな。
モハメッドは、チキンの胴回りに食らいつい
て脇目もふらず食べている。子供たちはビー
フシチューに手を伸ばして、美味しそうにお
かわりして、もうすっかりリラックスの様子。
それにしてもアマルはよく笑う。超ほがらか
といったら、ピッタシカンカンだろう。しか
し、これまでエジプトに限らず、中東あたり
の女性は、他人を前に大口あけてこんなに笑
うものかと、素朴な疑問を感じていた。高田
悦子さん(長谷川のカミさん)も「私も不思
議に思っています」と言っていた。この他に
も不思議に見えたことがあった。ご主人モハ
メッドが真剣にお祈りを捧げているときも、
そばにいてわれ関せずという態度だった。私
たちは、エジプトの女性をなーんも知らない
のだ。それにしてもアマルは、変な人。

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●注目のユニット、岸本一遥&フレンズ
24:00。いちだんと音のボリュームのあが
った第2エリアを通って、電球の明かりを頼
りにステージまでたどり着く。60分押しだ
というのでプログラムを見ると、23:00に
出演するバンドがいまやっていた。
『Bluegrass 鉄かぶと』『有田純弘のギター
ソロ』『The Gentlemen』『大江戸多摩バン
ド』とすすんで、そして今年の箱根の大注目
『岸本一遥とフレンズ』の演奏が始まった。
ベースにラット・オーケストラの手島昭英、
マンドリンは神戸の若い井上太郎、ギターに
はテキーラ・サーキットの奥沢明雄、バンジ
ョーはもちろん有田純弘、そして岸本のフィ
ドルという豪華メンバー。
トイレから戻った堀内が「このバンド、下で
練習してた。こまかくタイミングのチェック
をやってた。おもしろいよ」といってステー
ジを見つめてる。
箱根に久しぶりに現れた岸本のメニューは、
自分が書いたミディアムテンポのオリジナル
2曲と、太郎のオリジナル1曲の計3曲、
真夜中の箱根の山に強烈にひびき渡った。メ
ンバーの素晴しいサポートに乗って、岸本の
フィドルは美しく伸びて、艶やかで繊細だっ
た。箱根に顔を見せないあいだに、またいち
だんと安定感を持った。以前の、冷たく刺さ
るような音も消えている。あとはもう自分の
アルバムを作るだけだろう。

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●夜明けのジャズ・セッション
27:00。バンガローに有田がやって来た。
修理したマーティンD-28をチェックにきた
といって、バリバリと目にも止まらない速さ
で弾く。低い音から一瞬にハイポジのきらき
らした音へ飛ぶ。凄すぎて、あんまり見かけ
ない場面だ。夢弦堂亭主、修理人西貝を見て
仕上がりは満足そうだ。
「ウーン、これ1本でいいかな」と、もう1
本のマーティンを売る気にみえたので、いく
ら?と聞くと「57万」という答えが返って
来た。
ジャンゴギターをハダカで抱えた長谷川が、
もう一人を連れてやって来た。有田も同じジ
ャンゴギターを取り出した。3人でジャンゴ
の大パーティー、ジャム大会が始まった。
バンガローの中で眠っているはずの、モハメ
ッド・ファミリーは大丈夫か、と心配になっ
た。出入口には引戸はあっても、スキ間だら
けで、音はすべてつつ抜けだ。もう泣いても
笑っても、始まったものは止められない。
もう一人、ムーさんこと村山工房の主人が加
わった。すぐに軽快にリズムをつける。弾き
手が一人増えるだけで、音の厚みがまるで変
わり迫力が出る。それにしてもこのスウィン
グ感がいい。ジャムは佳境に入って、増々熱
くなっている。

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●天才マリオ・マカフェリとセルマーギター
さて、私はジャンゴギターと勝手によんでい
るギターは、実は由緒正しい歴史と伝統のあ
る大変な価値をもった、ギターファンだった
ら一目で泣き崩れるというしろものなのだ。
正式名は、なんと二つある。歴史的に説明す
ると、天才マリオ・マカフェリが1932年、
パリの楽器メーカー、セルマー社に入社。
33年に退職するまでの2年間、彼の指示に
よって作られたギターを『セルマー/マカフ
ェリ』と命名。もう一つは、マカフェリが
去ったあとの1934年から52年まで製造さ
れた『セルマー』である。
繰り返すと、ギターファンの気持ちを引付け
て放さないこのギターは、1932年から52年
までに作られたものだ。マニアは、どちらか
1本を手に入れたいと、夜も寝ないで探して
いるんだって。
しかし、これほどまでにこのギターの価値を
引き上げたものは、何か。そう、もう皆さん
ご存知だよね、あの大音楽家ジャンゴ・ライ
ンハルトその人。歴史的事実には、常に天才
どうしの出会いがあるといわれるが、まさに
天才マカフェリがギターを作り、天才ギタリ
スト、ジャンゴが弾く。夢のようなストーリ
ーだ。ジャンゴは、初期のセルマー/マカフ
ェリから使い始めて、その後のセルマーまで
生涯を通して愛用したという。中でもジャン
ゴの心をつかんだギターは、後期のセルマー
でシリアルNo.503なんだそうだ。
あの哀愁にみちて気品の高い、世界中のギタ
リストを魅了した音色には、こういう出会い
が隠されていたのである。
ちなみに、32年から52年までの期間で完成
販売されたものは、約1000本。うち380本
くらいが、現存しているとか。
箱根から帰って、この原稿にとりかかってか
ら分かったことだが、あのジャンゴギターの
ジャムの夜、長谷川が連れて来た人物、伊東
氏はナント、380本のうちの1本を所有して
いるお方だったんだって。そのうえ、ジャン
ゴ研究会なるものを主宰して活躍するギタリ
ストだそうだ。
私は、あの壮絶なジャムのとき、左手に白い
手袋をしながら器用に弾くのを見て、変わっ
た人がいるもんだなーぐらいにしか思わなか
った。ネコに小判だったのね。ギクッ。
というわけで、あの夜、プレーヤーたちが弾
いていたジャンゴギターは、本物は1本もな
く、すべてコピーだったのだ。あとからジャ
ムに加わったムーさんのは、デュポンだと教
えてくれた。「ここのはボデーが、白いんだ。
あとでサ、アメ色になっていく。フッフッフ
楽しくて、たまらないよ」とすっかりマニア。

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●チョー甘党モハメッド・プーさん
25日10:00。朝食はパン、スクランブルエ
ッグ、ウインナ&ピーマン炒め、野菜サラダ、
しめじ茗荷の味噌汁、残りのビーフシチュー、
残りのスペアリブ、コーヒー、キリンの生茶
というラインナップ。
今日でフェスは最後、まずは朝食から片ずけ
るのが毎年の恒例。モハメッドは今日も朝か
らヘビー・コーヒー・ドランカーとなって、
超甘いコーヒーをがぶがぶやっている。
「お酒もダメだから、コーヒーぐらいしょう
がないんじゃないの」という声もあるが、で
はエジプトには糖尿病ってものがないんだろ
うか。砂糖の在庫がなくなりそうなんだよ。
西貝がきのう大活躍したダッチオーブンの掃
除を始めた。「こうして手入れをしないと、
あとが大変」といいながら、炭おこしに使う
ガスバーナーをボーボー吹き付けて、目がと
ろんとして気持ちよさそうだ。
堀内は、夜の日本酒がたたって目が赤く、椅
子にへたりこんでいる。日本酒の深情け?
谷口・入来組は、相変わらずの食欲を発揮し
て、物もいわず片ずけ役の任務をまっとうし
ている。今回は私のエントリーミスによって
出演がパーになってしまい、非常にバツが悪
かったが、楽しみは食うことだと開き直った
彼らには、かなり感謝している。谷口なんか
転勤先の長野県から来たのだ。

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●スウィングジャズ・ギター競演
13:00。長谷川がやって来て、「1時に出
るよ」といった。そう、豪華ジャンゴギター
競演のジャズが、いよいよステージに登場す
るのだ。
MCが「スウィング・ルーレット」と呼んだ。
フロントにずらり4人のギタリストが並び、
壮観である。左から有田、伊東、長谷川、栗
林。栗林は初顔で、長谷川に聞くと「トニー
・ライスが好きで、秋田出身だって」といっ
てたが、どうやら元はギター小僧らしい。
中央に座った伊東は、きのうのジャム同様、
左手に白い手袋をして、柔らかい音を丁寧に
出して気持ちよさそうだ。曲はジャンゴの有
名な『マイナー・スウィング』だ。
長谷川のプレイは、いつもひと際太くて大き
い音が特長で、本場のジプシーギタリストに
会ったことがないので分からないけど、本物
もこんな感じではないかと思っている。今日
も快調だ。
一方の有田は、優雅なフレーズを次々にきめ
て、余裕もあってさすがにいまをときめくミ
ュージシャン。音が揺れながらつながって流
れ、魔法のように指が動く。世界のトップレ
ベルのプレーヤーである。
岸本は、きのうとは違って非常にリラックス
した表情で、ゆったりと主役のギターをサポ
ートしている。「ジンさん、11月のリサイタ
ルは絶対におもしろいから、必ず来てよ。約
束だよ」と繰り返しいってた。もちろん、行
く。みなさんも、ぜひ行って、岸本に声をか
けよう。(詳細は別掲)
『スウィング・ルーレット』には、来年もス
テージに出て欲しいと願ったのでした。

14:30。大きなゴミ袋を両手に持って、ゴ
ミ置き場を三往復した。宴のあと始末も終わ
り、02年の箱根フェスは終わった。モハメッ
ド・ファミリーとの大変オーバーな別れのと
ころが計算外で、はずかしかった。彼らの帰
りのエスコートは、西貝が引き受けた。
「アデオス、アミーゴ」だ。「エッ」

          佐々木 仁

     


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第4回 この頃のブルーグラス・フェスティバル/ 2002年9月8日号

CHIBA OLD TIME &
BLUEGRASS FESTIVAL

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今年も夏は暑かった。
汗が出て止まらず、このまま身体が干涸びる
のではないかと、マジで心配するほど暑い夜
もあった。
千葉フェスのあった7月の26・27・28(金・
土・日)も「もう勘弁してください」的に暑
かった。
私は27日のお昼近くに着いて、早速キャンプ
の支度にとりかかったが、地面からもやもや
と沸き立つ熱気のせいで、タープを張っただ
けなのにへたり込んでしまった。
それでも千葉フェスのスタッフは、暑いなど
眼中にないような明るい態度で、次から次と
入場して来るお客さまの案内に忙しく働いて
いた。
ステージの前は観客席になっているのは当然
として、ここはその後ろがテント村になって
いる。テントやタープのカラフルな色が、緑
の樹木や草に映えて美しい。柔らかい風が吹
いて、緑がゆれた。セミの合唱、夏まっ盛り。

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●いやされる緑の田園風景
会場内の通路とステージに挟まれる形で、ブ
ルーグラス専門ショップ『オンザボーダー』
が開店していた。10分ほど品物を眺め、グリ
スマンとガルシアのビデオ、GRATEFUL DA-
WGを買った。
そのオンザボーダーの前を妙齢の女性が、タ
オルで髪をふきながら通った。シャワーを浴
びたらしく、あたりにいいにおいをふりまき
ながら歩く。ウーン、シャワー設備は実にい
い、心が洗われるなー。
私たちはこのオンザボーダーを左に見ながら
奥に進み、広いキャンプグラウンドの中にテ
ントを設営した。どこまでも続く広いのどか
な田園風景を眺められるベストポイントだ。
「ビーン......ビーン」と音がする。100メー
ターくらい離れたところに、ラジコン飛行機
の基地があった。
麦わら帽子をかぶった人が小さく見える。ど
うやら空を仰いでリモコンを操っているよう
だ。お日さまから隠れるところがないから、
あのままだと熱中症になるんじゃないか、と
余計な心配をしたのだった。
プログラムは遅れることがなく順調に進行し
ている。ここの舞台は関東一広く、実際に立
つと広いからのびのびとした気分になる。キ
ャリアの浅いバンドには、リラックス出来る
ので助けになるのではと思った。
サウンドPAもよかった。オペレーターもベテ
ランらしく、ピックアップのよさがめだって
いた。是非ご体験をおすすめしたい。

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●気持ち込めてウエスト・オブ・ザ・ムーン
今年のステージ上での数々のバンドによるパ
フォーマンスは、間違いなく例年になく充実
していた。金曜日から日曜日まで全部を見た
訳ではないが、フェスのメインとなる土曜日
夜のステージは、覚えているかぎり最高だっ
たといいたい。今年で最後になるというモチ
ベーションによるものなのか知る由もないが、
登場するバンドすべてがよかった。
ザ・ジェントルメンもウワサ通りの出来で、
大きな拍手をもらっていた。あのままで20年
若かったら、日本のブルーグラスも結構な方
面に様変わりしていただろう。
しかし今年のハイライトは、何といっても『
ウエスト・オブ・ザ・ムーン』の出来がよか
ったことだろう。しばらく活動をやめていた
わりには、星のボーカルもウリのコーラスも
よく、バンドのタイミングもバッチリだった。
メンバー全員主催者という構成から、練習不
足は仕方がないだろうと考えて見ていたけど、
落ちついていて、まさに土曜日のトリにふさ
わしかった。その上今年で最後のオオトリの
役目も、長い年月の重さを知っていて、味わ
うように歌える彼らだからこそ果たせたと思
った。実に感動的だった。

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●地主からの土地賃料請求書は高かった
ご存知の通り、千葉オールドタイム・ブルー
グラス・フェスティバルは、27回目の今年を
もってジ・エンド、終了した。
主催者の一人でバンジョーマンの片岡邦明に
聞いた。
「私たちがこの場所をお借りしたのは25年前
だった。いまの地主さんのお父さんから貸し
てもらった。そのお父さんとは、私たちも気
を使っていたので関係はとてもよかった。音
楽バカの私たちに好意的だった。月日が過ぎ
て、好意的だったお父さんが亡くなってしま
った。状況が変わったのです。そうこうして
いるうちに、いまの地主さん、つまり相続し
た息子さんからここの土地、フェス会場に使
ってる場所の賃料を請求されました。それは
高額なもので、私たちの常識をはるかに超え
るものだった。それでもお金を集める努力は
したけどかなわず、ここでのフェス継続は不
可能と皆で判断を下しました。もちろん他の
場所を見つけて継続することも考えましたが、
この土地と場所でやってきた千葉フェスこそ、
私たちのできる最高のものだという譲れない
気持ちがあって、他でやることは考えられな
いんです」と残念な気持ちをおさえて静かに
話した。
27年前、千葉港公園で第1回目を開き、3
回目から現在の作倉市神戸に移った。
大変に長いあいだ続けて来られた原動力は、
何といってもブルーグラスとオールドタイム
を少しでも広めたいとする愛情だろう。
私はかつてブルーグラスの雑誌を出していて、
千葉フェスの主催団体『グループ・フロンテ
ィア』との付き合いも深いので知っているが、
この音楽を千葉で広めたいという情熱はメン
バーの誰もが強烈に持っていた。どんな場面
で会っても、だった。
この情熱が、夏冬天候に左右されないで集れ
るクラブハウスを建て、やがてクラブハウス
に接続する形で本場なみのステージも作って
千葉フェスの雰囲気を出した。
片岡のいう「私たちの最高のもの」を追求し
て来た意味は、このあたりにもあるようだ。
ただ、それだけの情熱があれば出直しもある
かもよ、と参加者のうれしい声も聞こえた。

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●フォーエヴァー千葉フェス
東京の茂泉次郎がムーンシャイナー誌に、
「フェスに行って、フェスを楽しめる自分が
幸せ。だから、なくなると困る」なんてこと
を書いてあったが、そういう意味では来年か
らお楽しみが一つ減ってしまう。楽しいブル
ーグラス人生もつまらなくなるって寸法だ。
ともかく、まずは主催者に大きな拍手と、感
謝の「ありがとう」を申し上げる。
そしてお疲れさまでした。

          佐々木 仁



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Rocking' Chair
/Tatsuo Kameno

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    Rocking' Chair
    収録曲
    1.Country blues
    2.Wall ofTime
    3.Banks of The Ohio
    4. Any Old Time
    5. Crazy
    6. I’m Coming Back But I Don’tKnow When
    7. I’ll See You in My Dreams
    8. Put Me On The Trail to Carolina
    9. No9 Train
    10. Warp your Troubles In Dreams
    11. Lullaby In Ragtime
    12. Rockin’ Chair
    12. When I’m Gone

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    141015_0001.jpg

    Take Me In Your Lifeboat
    /The Blueside of Lonesome


    1.How Mountain Girls Can Love
    2.Blue Ridge Cabin Home
    3.Kentucky Waltz
    4.Let Him Go On Mama
    5.It's Mighty Dark To Travel
    6.Take Me In Your Lifeboat
    7.My Oklahoma
    メンバー:
    Yoshie Sakamoto / Vocal
    Masuo Sasabe / Guitar, Vocal
    Yasuhisa Kato / Mandolin, Vocal
    Ryukichi Hayakawa / Banjo, Vocal
    Hiromu Teshima / Fiddle, Vocal
    Akihide Teshima / Bass

    制作:The Blueside ob Lonesome
    技術:Ryukichi Hayakawa, Hiromu Teshima
    デザイン&絵:Ashura Benimaru Itoh

    リルコミの紹介
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    130320IMG.jpg
    SOMEDAY/Yoshie Sakamoto
    1. My Shoes Keep Walking Back To You
    2. Someday
    3. Till A Tear Becomes A Rose
    4. Here Comes My Baby Back Again
    5. If My Heart Had Windows
    6. Blue Kentucky Girl
    7. I'll Take Care Of You
    8. You Take Me For Granted
    9. Under Your Spell Again
    10. In The Garden
    11. You Ain't Woman Enough
    12. We Must Have Been Out Of Our Mind(Duet with Takaaki Sakamoto)
    13. We'll Meet Again

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    1枚2,500円+送料

    坂本愛江の HP


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    IT'S A CRYING TIME


    Banjo-Eiichi Shimizu
    Guitar-SatoshiYamaguchi
    Mandolin-Kazuyoshi Ohnishi
    Bass-Akira Katsumi
    Fiddle-Morishige & Takada
    売価 ¥1980
    お問い合せ
    ビーオーエムサービス
    ●解説のリルコミ
    「IT'S A CRYING TIME」CDで復活!リルコミだあ

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    A New Peace Within / LEONA 111022.jpg

    1. A New Peace Within
    2. International Date Line
    3. Little Cabin Home on the Hill
    4. Endless Summer
    5. Close By
    6. Roly Poly
    7. Cherokee Shuffle
    8. Life's Inspiration
    9. Gypsy Spin
    10. Shade's of Blue
    11. Nobody's Love is Like Mine
    12. Soldier's Joy
    ●解説のリルコミ
    本日は臨時号です!リルコミだあ
    オフィシャルHP
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    「Hello, Old Friend」 cd_tq1.gif

    Tequila Circuit/Hello, Old Friend
    定価¥2,500
    ●CDのHP
    ●解説のリルコミ
    /テキーラ・サーキットのnew CDだよのリルコミで~す

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